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本気で考える災害時通信手段
鍵を握るのは信頼性の高い独自通信網

PSCP株式会社
代表取締役社長

渡邊一雄氏(左)

一般財団法人移動無線センター
専務理事 事業本部長

奥英之氏(右)

阪神淡路大震災や東日本大震災などの災害現場で活用

MCA無線(従来の「mcAccesse」および最新の「MCAアドバンス」の総称)が災害に強い理由は地震や暴風に強い独自の通信網を一般財団法人移動無線センター(MRC)が確立し、運用しているからだ。そのため、災害時に最も重視される安定的な通信を提供できている。MRCの専務理事で事業本部長を務める奥英之氏は「阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめとした数々の災害現場で活用されてきたのがMCA無線です。災害時にもつながる通信として信頼性の高さを示してきました」と語る。

MCA無線はサービス開始から今年で40年になる。2021年からは、より高性能の通信網「MCAアドバンス」の提供を開始した。MCAアドバンス用の端末を企画・開発し、販売を担うPSCP株式会社の代表取締役社長の渡邊一雄氏は「MCAアドバンスは専用インフラを備え、IP通信網も利用できる唯一無二の通信サービス。異なるネットワークが利用開始時から使える、高い冗長性が特徴。災害対策にどんどん活用して欲しい」と力を込める。

数々の災害現場で活用されているMCA無線

大規模災害時でも途絶えることのない通信手段が必要

平常時に最も身近な連絡手段と言えば携帯電話だが、2011年3月に発生した東日本大震災を皮切りに、地震や風水害の際にクローズアップされるのは携帯電話網の途絶だ。例えば、「令和2年7月豪雨」では、被害が甚大だった熊本県の球磨川流域で堤防の決壊や越水などにより多数の家屋が浸水し、延べ23市町村で携帯電話が途絶した。一方、MCA無線は被害の大きかった熊本県人吉市や熊本市も含めて、九州には20を超えるMCA無線の中継局が設置されているが、いずれも被害はなく、通信網を維持し、安定したサービスを提供し続けた。山地にある人吉市の中継局には保守要員がすぐに駆け付け、無事を確認した。MRCは人吉市などに12台のMCA端末を貸し出し、連絡手段の確保をサポートした。

なぜ、令和2年7月豪雨で携帯電話の通信網は一部が途切れ、MCA無線では問題がなかったのか。理由の一つは、通信方法の違いにある。携帯電話では、発せられた電波は近くの基地局に届く。基地局からさらに交換局を介して相手方の近くにある基地局に情報が伝わる。そして、その基地局から発せられた電波で相手方と通話できる仕組みだ。基地局は設置の条件によりカバーできる広さがそれぞれ異なり、半径数キロメートルから数百メートルと幅広い。このため基地局は、電柱や低層階ビルの屋上などにも設置されており、令和2年7月豪雨では、河川の氾濫や土砂崩れなどで最大で400近い基地局で停波が起こり、携帯電話の途絶につながった。

一方、MCA無線は、基地局を経由して会話をする携帯電話と異なり、中継局を介した通信をする仕組みだ。一つの中継局がカバーするのは半径約10キロメートルから30キロメートルで、携帯電話の基地局と比較するとかなり広い。同じ令和2年7月豪雨でMCA無線が停波しなかったのは、中継局が山頂や高層ビルの屋上など標高が高く見通しの良い場所に設置されており、中継局が被害を受けなかったからだ。浸水の影響は皆無だ。

全てのMCA中継局の局舎は、災害に強い耐震構造となっており、監視センター(東京)は24時間有人で監視している。万が一、東京が被災した場合にも関西で監視が可能となる。このように、中継局が堅牢堅固で、カバーエリアが広いために地上の影響を受けにくいことがMCA無線が災害に強いとされる一つの所以だ

また、MRCでは東日本大震災以降、非常時の電力供給に力を入れてきた。奥氏は「停電時にも最低3日間、非常用発電機による電力供給で中継局が止まらない体制を整えてきました。各中継局で貯蔵する燃料は消防法に定める最大限許容量まで増やしました。さらに3日目以降も稼働させるために民間の燃料会社と供給契約を締結し、燃料を届ける手はずになっています」と説明する。特筆すべき効果を発揮したのが、2016年4月に発生した熊本地震だ。MCA無線の中継局は熊本市や南阿蘇村、別府市などにも設置されているが、全中継局で被害はなかった。停電地域の中継局では非常用発電機が稼働。安定した通常運用を継続した。西原村などをカバーする阿蘇中継局では、電力会社による供給再開までに1年以上を要したが、非常用発電機への燃料補給を継続することで阿蘇中継局の運用を維持。周辺自治体などへ途絶えることのない通信を提供し続けた。

災害時に高まる輻輳(ふくそう)の危険性

MRCのネットワーク監視体制は24時間365日、東京の監視センターで有人対応している。仮に首都圏で大規模災害が発生し、監視不可能になった際にも、大阪の監視センターに切り替わる。中継局と中継局などを結ぶバックホール回線は、有線と無線による二重の接続で冗長性を高めている。万が一通信が途切れても同一中継局内の通信は継続して利用できる。

安定したネットワークであるMCA無線には、もう1つの利点がある。それは、通信が集中してシステムの処理能力を超え、通信がつながりにくくなる輻輳が極めて起きにくいということだ。東日本大震災ではドコモの携帯電話では、通常の50~60倍の通信トラフィックが発生。携帯各社を比べると最大でドコモが90%、auが95%、ソフトバンクが70%の通信規制を実施した。携帯電話網の契約者数の増加と通信トラフィックの激増は、我々の利便性や生活満足度を高める一方で、災害時にネットワークへ多大な負荷をかけ、通信を途絶させる危険性を高めている。

総務省が設置したインターネットトラヒック研究会が2021年5月にまとめた報告書で指摘したのが、災害時に通信トラフィックが混雑し、インターネットが利用できない可能性だ。現状、日常的なトラフィックは東日本に大きく偏っている。ひとたび東京で大規模災害が発生すると、東京で中継されていた大量のトラフィックが大阪に迂回され、同時に基幹通信回線の容量減少による混雑も重なり、インターネット接続が影響を受けるというものだ。このように公衆回線である携帯電話やデータ通信は、災害による影響を大きく受ける可能性がある。

もちろん、MCA無線でも災害時のトラフィックは増加するが、限られた契約者だけが利用するため、公衆回線ほど激的な変化は想定しづらい。奥氏は「様々な推計を実施しています。そこから、MCA無線で輻輳が発生する可能性は極めて低いという手応えを持っています」と話す。

新たな無線通信システム「MCAアドバンス」

新たな無線通信システムとして2021年から提供を開始したのが、MCAアドバンスだ。これは携帯電話各社が採用している第4世代の通信方式であるLTEをMCA無線独自の通信網に利用したサービス。これまで災害に強いと評価されてきた従来のmcAccesseの通信網は第2世代の携帯電話方式で運用されていたため、音声中心の通信に限定されていた。「待望のサービスです」と渡邊氏は話す。2019年4月に「高度MCAシステム」の制度化に係る電波法施行規則の改正省令が施行され、サービス開始に向けて動き出した。2020年から試験運用をはじめ、2021年4月からフルサービスの提供を開始した。

現在は、MCAアドバンスに対応している約120の中継局がカバーする国内主要エリアで利用可能で、エリアは今後も拡大予定だ。

MCAアドバンスでは900MHz帯を利用し、大量のデータを素早く通信できるようになった。また、NTTドコモのデータ通信網を活用したIP無線としても利用できる設計だ。独自のLTE網とドコモの通信網による通信の二重化により、トンネル内や建物の中、地下街などMCA電波の届きにくかった場所でもつながりやすくなった。

また、サービス開始に伴い、新たな端末を導入した。これまでのようなトランシーバー型ではなく、直感的に操作でき、タフなつくりになっているスマートフォンタイプと車載型だ。スマートフォンタイプは、信頼性の高い京セラとモトローラ・ソリューションズの2種類。いずれも災害時に不可欠な機能を最優先に搭載した仕様だ。耐落下性と耐衝撃性はアメリカの国防総省が定めるMIL規格に対応し、防塵防水性はIP67に準拠。各社独自の技術で、タッチパネルは手袋を装着したままでも操作が可能だ。無線での対話に不可欠な、大音量でクリアなフロントスピーカーを搭載している。

近年のスマートフォンは薄型化のため自らバッテリーを交換できないタイプがほとんどだが、いずれも交換可能。予備バッテリーをそろえることで、継続した利用が可能だ。バッテリーは使用条件などにもよるが、24時間以上の連続使用ができる容量を標準に備え、モトローラでは5000mAhの大容量バッテリーもオプション発売されている。車載用の端末は、通信機器の製造で歴史のあるトム通信工業が製造している。

画像や動画共有などのアプリケーションにより災害時だけなく平常時の活用も

スマートフォンタイプの端末にインストールされているアプリケーションに、「MCAアドバンスチャット」と「MCAアドバンスライブストリーム」がある。

「MCAアドバンスチャット」は文字と画像、5秒程度の短い動画を共有しながら送るシンプルなアプリ。操作性もよく、タイムリーなメッセージの交換に向いている機能だ。災害現場の状況を文字だけでなく画像や動画で伝えることができて、グループ設定も可能。閲覧すると既読が表示される一般的なデザインで、抵抗なく利用できる。災害時だけではなく、平常時から点検業務など音声だけでは伝えにくい状況を画像で伝えたり、騒音で音声が聞き取りにくいときにはテキストメッセージで連絡するなど、その活用方法は幅広い。BCPテンプレートとして安否確認が可能な定型文章も今後提供予定だ。

「MCAアドバンスライブストリーム」は、現場の映像をリアルタイムに伝えることで素早く正確に状況を把握でき、通信状況の変化に対応し画質を自動調整する。平常時には保守業務などでの現場作業の指示や確認を音声だけではなく映像を通じて実施することができ、災害時となれば、公衆通信網が輻輳する中でも本部に現場状況をリアルタイムに伝えることができるため、初動対応の遅れ防止にもつながる。同時に双方向の音声通話も可能だ。また、現場で問題が発生した際にも、映像の伝送と同時に録画されるため後から確認することもできる。オプションで暗所でも撮影可能な高感度のウェアラブルカメラを追加できる。

渡邊氏は「MCAアドバンスは新たなアプリケーションを開発しやすい仕様になっているため、今後の成長も期待できる」と話す。その理由は、PSCP以外の企業からのアプリ開発の参入を促すため、APIを公開しているからだ。これまでに、現地で撮影した画像を地図上にプロットできる「指令局地図写真オプション」や「ランドマークオプション」、国土交通省が発行しているハザードマップを取り込み地図上に表示できる「ハザードマップオプション」が開発され導入されている。「MCAアドバンスはお客様のニーズにあった使い方が可能なサービスです。お客様とPSCP、そして我々MRCが協力し、利用価値を高めていきたい」と奥氏は話す。

文字・画像での確実な情報共有を実現し、操作性もシンプルで分かりやすい

通信の冗長化やコスト削減を評価
各自治体や企業で導入が進む

2021年の事業開始からわずか2年ほどで、MCAアドバンスは約110の団体・企業(2022年9月末時点)で導入されている。そのうち約30団体が自治体で、ほとんどが防災行政無線の代替として利用されている。また、通信が集中し公衆網が輻輳することが多い大規模イベントなどでも利用されている。

約98万人が暮らす千葉市も2021年から利用している。同市では2010年度に整備した自営通信網の防災無線システムが、機器耐用年数である9年を越え老朽化。現行システムのまま設備を更新すると高額の費用が掛かる点や、最大11回線しか同時利用できないなどの技術的な課題を理由に新たなシステムを導入することになった。これまでの自営通信網による無線では、ときに音声通信が不通になるなど、大規模災害時の情報共有に不安を抱いており、新たな通信網には高い信頼性を求めた。

千葉市はMCAアドバンス導入以前の、2019年の台風15号で大きな被害を受けた自治体だ。この台風で千葉県を中心に最大で93万戸を超える世帯で停電が発生し、完全復旧までに19日間もかかる異例の事態だった。MRC事業本部次長の本間達也氏は「実は、2019年の台風15号が来る前まで、千葉県内のいくつかの自治体で、災害がないからとMCA無線の契約をやめたところがある。費用が安いIP無線に乗り換えていた」と話す。2019年は台風15号だけでなく、令和最大の犠牲者を出した19号も襲来。MRCではこれらの台風で千葉県に47台のMCA端末を貸し出した。

千葉市は、自営通信網以外の無線システムであることを条件に、プロポーザル方式により新無線システムの選定を行った。それまでの経験から、自営通信網は初期投資額が大きく、日々の維持管理も事業者に委託するため財務的な負担が大きいと考えていた。MCAアドバンスを採用した理由は、無線機のバッテリー持続時間やスマートフォン同様の操作性、写真の転送なども出来る機能性だ。また、輻輳が発生しにくく、独自の通信網に加えてNTTドコモのIP無線網が利用可能で通信が冗長化されている点やコスト削減につながる点も評価された。同市の試算によると、自営通信網の設置と比較して約40%の費用低減が算出され、480台の端末が導入された。

公衆回線のデータ通信網を使う他社のIP無線サービスは、スケールメリットがあり、MCAアドバンスに比べるとコストは安い。しかし、奥氏は「MCAアドバンスは中継局を中心とした冗長性の高い通信網を独自に整備し、加えてNTTドコモのIP通信網による二重化で信頼性の高い通信網を構築している点が他社のIP無線サービスと大きく異なる」と話す。

MCAアドバンスは自治体に限らず、企業への導入も進んでいる。最も採用されている業種は製造業で、情報通信業、不動産業が続く。注目すべきは金融業での利用が少なくないことだ。「銀行は想像できると思いますが、実は外資系の金融機関でも多く導入されています。それだけBCPへの要求が高いのではないか」と渡邊氏は話す。

毎年のように大規模な風水害が起こり、南海トラフ大地震など大きな災害の発生が想定されている日本。「40年間、信頼性が揺らいでいないMCA無線の通信網が、この40年でもっとも使いやすくなった。独自通信網をいかして今後も日本の防災に貢献していきたい」と奥氏は話す。渡邊氏は「MCA無線の通信網のメリットは計り知れない。MCAアドバンスなら、最初から異なる通信網で回線が二重化されている。この点を今後も伝えていきたい」と語った。

問い合わせ先
一般財団法人移動無線センター
TEL
03-5323-5509
MAIL
mcaccess_e@mrc.or.jp
PSCP株式会社
TEL
03-6455-7460
MAIL
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